都市に暮らす5

ガス防災における新しい展開

東京ガスでは、より精度の高い感震器によるきわめて正確で緻密な
ガス遮断のシステムの構築について、株式会社山武との共同研究で
まったく新しい感震器であるインテリジェント地震センサを開発し
た。この新しい地震センサの発表は、ＮＨＫテレビの全国ニュース
で報じられたほどで、小型で性能の高い地震センサは、他のガス会
社を含めて各方面から高い注目を浴びている。

従来東京ガスでは、地震モニタリングにおいて地震動データなどを
送る能力を持った感震器を 331カ所にわたって展開してきた。とこ
ろが新しい地震センサは地震動データを送る能力を持ちながら小型
・高性能・低価格を実現したために、これを従来のガス遮断信号を
出すだけの3600カ所の感震器とすべて入れ替えることが可能となっ
たのである。するとどういうことが実現されるか。

まず、高精度な地区ガバナ管理が詳細な地震動データに基づいて行
えることになり、地震の際に不要な遮断をしなくてもすむことにな
る。すなわち被災後のガス復旧レベルが格段に向上する。

東京ガスはガス供給会社の使命としてこの事業に力を注いできたの
である。と同時に、新しい地震センサを3600カ所に設置するという
ことは､実に0.9キロ四方にひとつの地震情報収集装置を設置した世
界一密度の高い地震モニタリングシステムが実現することともなっ
たのである。一企業の取り組みとしては驚くべきことである。

またガス配管に強いダメージを与えると考えられる液状化現象につ
いては従来、液状化センシングに特化した大型の液状化センサを要
警戒ポイントに20カ所配置して監視をしてきた。ところが新しい
地震センサにはその液状化検知機能も搭載されている。ということ
は、世界一密度の高い地震観測網すべてから液状化情報を収集する
ことができるのである。

こうした緻密な地震データは、突然の大地震に大きな力を発揮する
ばかりでなく、災害を伴わない日常的な地震についても詳細なデー
タを収集する高度なシステムとなる。東京ガスでは、膨大な数の地
震情報収集装置を備えたこの一大ネットワークから採取され蓄積さ
れる地震データを公共団体や学問の場に提供して、地震発生研究に
資していく予定だという。

この新しい地震センサは、ガス防災に特化して作られたものではな
い。きわめて汎用性の高い地震センサである。小型・高性能・低価
格を実現したセンサは従来の高価な地震センサにとって代わり、今
後さまざまな都市機能の安全のために使われることになるだろう。

高速道路の地震観測網をより緻密にするために、巨大プラントの地
震防災対策のために、さらにはインテリジェントビルをはじめとす
るあらゆる都市機能の地震防災対策のために活用される日も遠くな
いはずだ。ガスのみならずあらゆる危険因子を含む場所への設置に
より、地震の二次防災をより高めることになる。

東京ガスでは、この新たな地震センサを備えた地震防災システムの
力を現場で実証しながら、そのシステムを海外に輸出することも考
えているという。世界には日本に限らず地震災害に見舞われること
の多い国がある。そうした国々に精度の高い地震防災システムが輸
出される時、それは新たな国際貢献ともなるはずである。

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二次災害防止のためのガス遮断装置
東京ガスがそのガス供給エリアに3600カ所も設置しているガス圧
調整のための「地区ガバナ」と呼ばれる施設。公園や街の一角に
金網などで仕切られているその姿を目にすることも多いだろう。
ここで、暮らしに使うための圧力にガスを変圧する。と同時に一
定以上の地震に際してガスを自動遮断してエリアの二次災害を防
ぐ役割を持つ。ここに備え付けられる新たな地震センサが、今後
の地震防災に大きな役割を果たすことになるはずである。・・・

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[データ]
｢新版･東京は60秒で崩壊する!－超巨大地震と世界大不況の衝撃｣
(P.ハッドフィールド著･竹内均監訳･赤井照久訳･ダイヤモンド社)
｢耐震技術のはなし｣(永井達也編著･日本実業出版社)
｢平成10年版･防災白書のあらまし｣(大蔵省印刷局)