ヘリコバクター･ピロリ菌1

文豪を悩ませた病

私はDr.Stomachである。過日ある文章を読んでいた。するとそこに
は､こんな話が載っていた。｢明治の文豪である夏目漱石は、胃潰瘍
で長い間苦しめられ、結句、その病のために大作『明暗』を未完の
ままにして逝ってしまった。彼が胃の病に始終苦しめられたのは、
文学的懊悩もさることながら、その胃の中にはヘリコバクター・ピ
ロリ菌が潜んでいたのではないかと思われる｣と。

私は思わず、思案の首を投げた。ヘリコバクター・ピロリ菌とはな
んぞや。Dr.Stomachを任ずる私が、何故それを知らないかと読者が
いぶかしがるのは当然のことであろう。だが私は実のところ医者で
はない。Dr.Stomachの称号は、私のあまりの大食漢ぶりに友人たち
が戯れに名づけた渾名である。

が、医者にあらぬ身なれども、そんなニックネームを頂戴している
以上、思案の首を投げていたままでは、名がすたる。そこで友人で
ある医者のところへ教えを請いに出かけ、講釈をうけてきた。実に
有益な話であった。が、その医者の講釈するところは、余りにも微
に入り細に亘っていたために一般にはやや煩雑に過ぎる趣があるや
もしれぬ。そこで不肖なりといえどもDr.Stomachを僭称する者とし
て、友人の教えをもとに、ヘリコバクター・ピロリ菌についての研
究を進めてみた。そこで今日は、その付け焼き刃的成果をお目に供
したい。ご迷惑を省みず、お付き合いを乞う次第であるm(_ _)m

[2]へ続く