うるおいの肌4

美肌への憧れはなぜ

うるおいの肌を求めて、肌のみずみずしさや肌理の細かさをそのメ
カニズムとともにたずねてみた。だがどうも、みずみずしく肌理細
かい肌というのは若い人々の特権のように見えてくる。これは動物
行動学の見地からすれば、当然なのかもしれない。つまり生物が自
らの遺伝子をよりよく後代に残すために、その最も繁殖のさかんな
時期に異性を魅了する特色を集めるのだから。つまり若さ故の美肌
とは、生物が持つ遺伝子戦略のひとつであるのかもしれない。

そして、一般に生物はその遺伝子を後代によりよく残すための繁殖
の時期を過ぎると、余り長い時間を経ずして死んでゆくという。と
ころが人はその時期を経てなお長生きする動物である。だとすれば
長生きの結果、若さ故の美から遠のいてしまうことはいたしかたの
ないことなのだろう。とはいえ人の思いは、理屈としてそれを知っ
ていても、その美に拘泥せざるをえない。

その思いは男性にも根強くあるはずだが、女性はこうした思いに素
直な拘泥を見せる。そのひとつの現れが化粧といえるだろう。化粧
とは女性が自らの美しさを自ら確認する行為のひとつである。最近
では文化的爛熟の現れとして男性の化粧が取り上げられることがあ
るが、それは文化的爛熟というよりは、男性が美に対する拘泥の素
直さを女性に学んだ結果という方が正しいかもしれない。

ただ、女性の美に対する意識は、そんな男性を越えてさらに進んで
いる。それは、生き方へのナチュラル志向を反映した結果なのだろ
うか、化粧(けわい)としての美顔より、肌そのものを美しく保とう
とする美顔に関心が高まっているようにうかがえる。スキンケアに
関する化粧品広告の多さは、その反映であるに違いない。

[5]へ続く