瞳は心の入力装置1

眼は露出した脳?!

｢眼は心の窓｣という。心の在り様がそこに映るからだ。一方、外界
から情報を得るための最も大きな入口でもある。とすれば｢眼は世
界を覗く窓｣であり、｢心の入力装置｣でもあるといえようか。

｢瞳｣とは本来、眼という視覚器官の黒眼部分を指して呼ぶのが一般
的なのだろう。しかし、ここから光が入ることによって、視覚器官
である眼は、はじめてその機能を働かせはじめる。そこに重点をお
けば、瞳とは、まさに眼の｢眼目(がんもく)｣といえる。タイトルに
おいて眼という代わりに瞳をもちだした所以である。

眼は心の窓として、人の心を映し出すものであるといわれる。精神
科医によれば、人は何かを思い出そうとするときや何かを隠して話
そうとするときなどに、特別な眼の動かし方をするという。眼が心
の窓であることのひとつの証しといえよう。

眼を心の窓とする捉え方では、外側から眺めて、瞳の美しさや眼球
の動きで人間心理や心の在りようを求めようとする。ところが、視
覚器官としての眼の内部に入り込んでいくと、眼という器官が、ヒ
トの情報認識において大きな働きをしている様子が見て取れる。

ヒトが外界からの情報を五感によって収集しようとするとき、視覚
はその半分以上､一説によれば80パーセントも担うといわれている｡
そこに、視覚器官である眼と脳との密接なつながりも見逃すことは
できない。

眼は外部にもちだされた脳だという学者がいる。それは眼の発生を
見れば明らかだ。網膜や視神経、虹彩(こうさい)は中枢神経の一部
である｢眼胞(がんぽう)｣がもとになって形成された。そして眼胞と
はそもそも、｢前脳胞｣と呼ばれる発生段階にある神経器官の一部が
外にふくれだしたもので、頭部表皮と接しているとされる。

このように見てくると､脳が眼という視覚器官から情報を収集して､
生き物、殊にヒトの行動をつかさどっているのは当然であると思え
てくる。その眼が、では、どのようにものを見、どのように脳へ情
報を送り込んでいるのだろうか。それが今回の｢瞳は心の入力装置｣
というタイトルで語ろうとするテーマである。

[2]へ続く