今年二度目の忌中

今年二度目の忌中
2002/11/30

本日未明、午前６時過ぎ、愛猫｢デリ｣が逝去しました。生前のご厚誼
に感謝するとともに、謹んでご報告させていただきます。およそ10年
弱の短い命でした。我が愛猫の冥福を祈ります(ｰ人ｰ)

｢デリ｣の本名は｢ラ･パレット･デリエール｣でした。ラ・パレットがブ
リーダ名、Ｄで始まる名前は、その母親の４回目の出産によって生ま
れたことを意味しています。血統書付の猫は、こういう風に命名する
ものなのだそうです。長い名前でした。

死因は内臓のガンでした。１ヵ月半ほど前、一度かなり悪くなり、皆
さまにもここのＢＢＳでご報告し、ご心配していただきました。しか
し薬と介護で、いったんは元気に戻り、その後、つい３～４日前まで
は、あの悪かったことが信じられないくらい元気にしてきました。

洋猫のくせに、肉よりも魚が好きで、ことに背中の青い魚を好んでよ
く食べました。元気に快復してからは、好きな餌である魚類の缶詰だ
けを与えていましたが、とてもよく食べ、走り回るほど元気でした。

それが３日ほど前でしょうか、真っ黒な吐瀉物を吐いたのを境に急に
食べ物を食べなくなりました。ただじっとうずくまるばかりで餌も食
べようとしません。ほんとうに急な容態の変わりようでした。

それからは、餌を少しずつ口に運んでやり、水をスポイトで飲ませて
様子を見るしかありませんでした。一昨晩、気がつくと水の容器の前
にうずくまっているので、水をスポイトで口に入れてやるとよく飲み
ました。しかもその後、水の容器に顔を突っ込んで、ゆっくり休み休
みですが、長いこと水を飲んでいました。こんなに飲んでまた吐かな
ければいいがと心配するほどでした。

それでも吐くことはなく、また静かにうずくまったままです。そっと
抱き上げて寝床に入れてやると、長毛種独特の高い声で一声ミャーと
鳴きました。何かを訴えるような声でした。苦しかったのかもしれま
せん。しかし、その苦しさの程度がわかりません。それがそばにいて
一番つらいことでした。分かってやれないことが。

そして今日未明まで、少しばかりの水と少しばかりの柔らかい魚の餌
を口にしただけで、前足をそろえ、そこに顔を埋めるようにしながら
下を向いた姿勢で、じっとうずくまるだけでした。

それでも名前を呼ぶと静かに顔を上げます。その目はぱっちりと見開
かれていて、いつもの愛くるしい瞳でした。しかし、やんちゃで人の
膝に飛び乗ってきたあの日のような瞳の力はありませんでした。

この猫は友人のブリーダからいただいたものでした。以前に他所から
引き取って飼っていたゲンタというヒマラヤンのクリームポイントと
同種だから大きくなる猫だといって持ってきてくださったのです。

生後６ヶ月以内に去勢手術をしたせいでしょうか。まさに巨大猫へと
生長しました。しかし、そのしぐさや顔つきは、子供の猫のままとい
う感じでした。人懐こくて、まるで犬のような気分を感じさせてくれ
る、そんな猫だったのです。

私が寝床で本を読むとその枕もとに喉を鳴らしながら寄ってきて、な
ぜか本と顔の間に入り込みます。そして本を読んでいる間、ずっと喉
を鳴らしながらそこに丸まって気持ちよさそうにしていました。なん
とも不思議な行動でしたが、そんなことをされると、飼い主としては
うれしくて、可愛くて、たまらなくいとおしくなったものです。

スツールに足を乗せてテレビを見たり本を読んでいると、その伸ばし
た足の上に飛び乗ってきて、まるでマッサージをするように人の腿を
前足で交互に足踏みするように押さえるるのです。あれはなんだった
んでしょうか。そして、気に入ったポジションを見つけて、そこに丸
くなって休み、時には寝てしまうこともありました。まるで彼と一体
になれるようなそんな、いとおしくもやさしい時間でした。

その大きさからいつも泰然とした風貌を見せつつ、ときに子供のよう
に人懐こい情を示してくれた、かけがえのない家族でした。その彼が
静かに逝きました。いまはただ、驚きに満ちて、しんとした気持ちに
なるばかりです。きっと別離感は後から襲ってくるのでしょう。

たくさんのともに生きた10年の情景が、ふと目に浮かんだときにきっ
と、猛烈なやるせなさがこみ上げてくるような気がします。今は泣き
ません。いや、なぜか泣けません。でもそのときには、おそらく彼を
偲んで静かな悲しみがこみあげてくるのかもしれません。

そんな深い交情を遺して逝った彼に、ただただ感謝の気持ちだけが湧
き上がってきます。でも、もう逝ってしまいました。ただひたすらな
切なさだけが湧き上がってきます。デリ、そばにいてくれて、ほんと
うにありがとう。とても楽しかった。さようなら････。

[デリ遺影]