懐かし博物館

過ぎ去った時を取り戻すことはできない。
時はさらさらと指の間から
落ちる砂のようにこぼれ去ってゆくだけだ。

しかし思い出なら｢もの｣に託して残しておくことができる。
過ぎ去った時を刻印したセピア色の写真は
青春の喜びと屈託をありありと思い起こさせてくれるだろう。

ちぎられたチケットの半券からは
スクリーンの華やかさとともに
甘くやるせない初恋の気分までもが浮かび上がってくる。

自分だけの時間を濃縮して湛えていてくれる
思い出の｢もの｣たち。

そうした｢もの｣を求めて時間軸をさらにさかのぼっていく時
現れてくる究極の原風景は
小銭を握りしめて通った駄菓子屋の姿かもしれない。

そこには手の届く夢がいくつもあった。
甘い物への誘惑を満たしてくれたキャンディーやキャラメル。
小さな射幸心をくすぐった当てもの籤(くじ)のときめき感。
高級なおもちゃの代用として
そっと自分を慰撫してくれた菓子付のおもちゃ。

それらのひとつひとつにこめられた自分だけの時間。
その時間を愛でることが、懐かしさの源泉なのかもしれない。

[データ]
〒225神奈川県横浜市青葉区美しが丘3-6-6(たまプラーザ歯科内)
電話 045-901-4582
田園都市線たまプラーザ駅下車。東急バス
虹が丘営業所行バスで、美しが丘3丁目下車。徒歩2分。
私設博物館のため電話予約が必要。
入山喜良さんが開院する歯科医院の一角に作り上げた私設博物館。
20数年かけてこつこつと蒐集したブリキおもちゃ、駄菓子、ホー
ローびきの看板、プレミアム、ニッキ水や金平糖の小さな瓶など
は、ざっと１万点以上。そのコレクションの一部が、診察室に隣
接する３部屋に展示されている。診察を待つ間のひとときの慰め
になればと開設した。駄菓子ケースの中には、キャラメルの箱が
びっしり詰まっていたり、往時の駄菓子屋そのままの雰囲気が珍
しい。まるで一昔も二昔も前にタイムトリップしたような気分に
させてくれる。診察時間内なら気軽に見学させてもらえる。