神々との共鳴

太鼓を膜鳴楽器という。木を刳り抜き、動物の皮を張って
叩く｡リズムを刻みながら太い音を力強く響かせ聴かせる｡

さしたるメロディを奏でるでもない単調な響き。耳を聾す
る轟きが五体を直截にふるわせる時、その音は間違いなく
神々の眠りを醒ますだろう。そして人々は、歓喜のうちに
神々との深くやさしい共鳴を味わうのだ。

ジャワの東､フロレス島の人々は､雨乞いに太鼓を打ち鳴ら
し雷鳴を呼びよせる。共鳴感が祈りと密接に結びついた姿
である。箱根以西に広がったという風流踊の伝統は、趣向
をこらした扮装の集団が笛や太鼓で踊り歩くものだった。
その中には雨乞い踊も念仏踊も含まれる。

太鼓に刻まれるリズムに乗って踊り続ける時、人は急速に
我を忘れ、トランス状態という昴りの中で、神々との交信
を手にする。その時、太鼓の重く深い響きは、紛れもなく
神々と交信するための通奏低音となったはずである。

太鼓の音はまた、遠くの仲間への交信にも用いられる。言
葉が暗号化された音の信号となって伝わる秘儀は、紛れも
なく神々との交信を下敷きにしていよう。

とすれば、楽の音の中で奏される太鼓やドラムの響きは何
を意味するのだろうか。それは楽曲を作りだした者の魂に
降り来った神からの啓示を伝えるものなのかもしれない。
その真実は、神のみぞ知るというところだろうか。

[データ]
〒111-0035 東京都台東区西浅草2-1-1 電話 03-3842-5622
営団地下鉄銀座線田原町駅より国際通りを北に向かって徒歩2分
休館日／月･火曜日開館時間／10：00～17：00
入館料／大人300円小人150円 (20人以上は要予約)

太鼓の名門店である宮本卯之助商店が世界各国から蒐集した貴重な太鼓と
資料を一般公開しているもの。収蔵品約600点。アジア､アフリカ､欧米各国の
太鼓を一堂に会して公開する世界初の博物館である。自分で叩いて音を確か
められるのもうれしい。