猫アレルギーな愛猫家

愛猫家は多いが、中には目を赤くし鼻水をこらえながら飼い
猫を可愛がっている人もいる。それは猫アレルギーな人々で
ある。アメリカの統計によると、彼の国では猫アレルギーな
人はおよそ600万人もいるといわれる。

その大半はもちろん猫を避けて暮らしているが、３分の１に
あたる人々は、それでも猫のいない人生など考えられないと
目をこすりながらの暮らしを選択しているのだという。

猫によるアレルギーは、一般に猫の唾液に由来すると信じら
れてきたというが、実は皮膚の油腺から出る物質によって引
き起こされるもらしい。その物質をFeld 1という。イエネコ
(Felis catus)から見つけられ､化学特性が明らかにされた第
１号のアレルギー反応誘発物質という意味だ。

この物質が猫の皮膚に排泄され、やがて空中へ飛散する。そ
して猫アレルギーを持つ人の粘膜にたどり着いて目を充血さ
せたり、鼻水を誘発したりするのだ。時には喘息を引き起こ
すこともある。きっとつらいことだろう。

そこで猫アレルギーの愛猫家たちは猫を入浴させる。ある実
験によれば猫をホースのお湯と石鹸で洗った場合、空気中の
アレルゲンが44％減り、湯にしっかり浸けて石鹸で洗った場
合には79％、その上さらに再び湯に浸けてすすいだ場合には
84％までアレルゲンが減少したという。

こうすれば猫アレルギーの愛猫家も鼻水をこらえながら猫を
可愛がるという妙な地獄を多少は味わわないでもすむことに
なる。しかしそれでも問題は残る。実はこのように猫を洗っ
ても、空中アレルゲンの濃度は１週間もすれば再び元に戻っ
てしまうのだ。元の木阿弥なのである。

そこで愛猫家は猫の入浴にさらに精を出すことになる。まあ
中には入浴が好きな猫もいるが、元来、水嫌いなのが猫であ
る。抵抗は大きい。それでも猫アレルギーの愛猫家たちは多
少の引っかき傷を我慢しても猫の入浴をせっせと行う。

なぜならば、猫が与えてくれる心の穏やかさには代えられな
いことを彼らは十二分に知っているからだ。ペットとは不思
議な存在だと、この話に触れてしみじみ思う。