ヘリコプターに乗る1

メガロポリスの夜空へ

梅雨明けの青空を眺めていたら、唐突だが、ヘリコプターに乗りた
くなった。メガロポリス東京の都心部上空を夜間に回遊して、その
光に満ちた美しさに触れてみたいという思いにかられたのだ。

そんなことを考え出したら矢も盾もたまらなくなり、大急ぎでイン
ターネット検索をし、気軽なフライトが楽しめるところはないかと
探ってみた。すると、意外と手近にあった。東京・江東区新木場の
東京へリポートである。国内最大の民間ヘリコプター会社である朝
日航洋のグループ企業・朝日ヘリコプターが企画を実施していた。

余談だが、現在のＡＮＡも朝日航洋と同様の戦後期にヘリコプター
企業として設立されたものだという。当時の社名を日本ヘリコプタ
ー輸送という。｢ニッペリ｣と呼ばれていた。かつて尾翼にレオナル
ド･ダ･ビンチが描いたヘリコプター飛行概念図をマークとして用い
ていたのは、その発足に由来していたというわけだ。閑話休題。

一般にヘリコプターに搭乗するには相当の高額が必要と思っていた
のだが、１フライト8000円から夢がかなうと知った。この金額を高
いと見るか安いと見るかは人それぞれかもしれないが、切望する気
持ちには決して高価とは思えなかった。

３人が最少催行単位になっている。１人で出かけても搭乗ができる
が、客が３人になるまで待たなければならない。別額でチャーター
もある。友人たちを誘って申し込み、搭乗してみることにした。

夕暮れの東京へリポートにたたずむと、真正面に西臨海公園の大観
覧車が美しいイルミネーションを発して輝いている。これからフラ
イトをする都心の夜景は、おそらくそれ以上のきらめきを見せてく
れるのではないかと心がはやる。

ここ東京へリポートは東京都が管轄するヘリコプター専用の飛行場
で、警視庁、東京消防庁、川崎市消防局、新聞社、さらには民間ヘ
リコプター会社などのヘリコプターが離発着する荒川河口の一大ヘ
リポートである。ずらりと並んださまざまな機種が実に壮観だ。

搭乗するヘリコプターは、フランス・ユーロコプター社製のアエロ
スパシアル式AS355F1型JA9601号機。座席は車の座席程度の広さで､
前列右がパイロット席、左が助手席で、客席にもなる。後部席が４
人掛けのシート。総勢６人乗りである。

着席後にマイク付きのヘッドホンを着装する。飛行中、互いのやり
取りはこのマイクで行う。パイロットの指示や案内もこのヘッドホ
ンから聞こえてくる。いざ、離陸!!

飛行機の離陸を思い浮かべると、なんとも静かで穏やかなテイクオ
フである。ふわりと機体もろとも我々は宙に運ばれていく。機体は
ベイエリア、銀座方面へと飛行していった。

[2]へ続く