熊と狼

熊と狼
2002/12/17

｢赤頭巾ちゃん｣や｢グリズリー｣の話ではありません＼(^^ ) 最近読ん
だすぐれものの小説の話を、めずらしく書きたくなりました。ふだん
書評めいたことはあまり書かないつもりなんですが････(^^ゞ

まずは｢熊｣の話です。著者は熊谷達也。タイトルは｢ウエインカムイ
の爪｣といいます。サイトからあらすじを盗用してみましょう(^^;

｢北海道で撮影旅行中の動物写真家･吉本はある日、巨大なヒグマに襲
われ、九死に一生を得る。彼を救ったのは、クマを自在に操る不思議
な能力を持つ謎の女だった。野性と人間の壮絶な闘いを通して、生命
の尊厳と自立を描いた傑作。第十回小説すばる新人賞受賞作｣

４年前に集英社から単行本で出ました。現在は集英社文庫に収まって
います。実はこの本、息子のことどに借りて読んだ本でした。読後感
は、すげぇ作家が出てきたものだ、という軽いショックでした。

月日は移って、つい先日、八重洲ブックセンターに資料を仕入れるた
め出かけた折、ふと文庫本のフロアに足を向けてみましたら、同じく
熊谷達也の｢漂白の牙｣という文庫が並んでいました｡即買い!! 親本は
３年前に出た本でしたが寡聞にしてその出版を知りませんでした(^^;
これもサイトから解説文を剽窃します(^o☆)＼kon!!

｢東北地方の山村。動物行動学者･城島の最愛の妻が惨殺された。その
無惨な傷跡から、何ものかの野生動物によるものと考えられたが、警
察も検死官もその正体を特定できなかった。単独調査に乗り出した城
島の結論は、絶滅したはずの｢ニホンオオカミ｣にいきつく。妻を殺め
たものの正体をつきとめるため、また研究者としてその存在を確かめ
るため、命がけの追跡が始まった｣

著者は1958年の宮城県生まれ。とどより一回り下の戌年ですねぇ。熊
の本(^^ゞがデビュー作でいきなり受賞。続いての作品もまた第19回
新田次郎文学賞を受賞しています。この勢いで行くと、直木賞を取る
のも時間の問題かもしれません。すでに３冊ほど新刊が出ています。

｢まほろばの疾風｣｢迎え火の山｣｢山背郷(短編集)｣。この３冊は未読で
すが、その舞台とテーマが全て東北になっています。｢漂白の牙｣の剽
窃解説ではまったく触れられていませんが、この本には｢サンカ｣の話
が色濃く出てきます。後続の３冊でも東北ならではの歴史や文化、た
とえば｢アテルイ｣｢出羽三山｣などが、深く掘り下げられている様子で
す。このあたりが σ(^^ )の注目の理由でして。

｢漂白の牙｣は単純な｢狼と野生の自然ロマン｣に納まっていません。そ
こにサンカという歴史的な漂白の民の存在が描かれ、彼らがいかに土
着させられたかが、マタギ伝説などを踏まえながら徐々に語られてい
く語り口が、民俗学としても興味深く描かれています。

こういう小説に出会うと、もうたまりませんね(^^ゞ文章も実にしっ
かりしていて読み込ませます。またまた好きな作家が一人増えてしま
いました(^-^) と、さんざいろんなことを書いてきたわりには、自分
のメモになってるだけで(^^ゞ作家像や作品イメージがしっかり書け
てなくてごめんなさいm(_ _)m＼(^^ )