内幕もの的リアリズム

内幕もの的リアリズム
2002/02/23

16日ぶりの更新です(^^ゞ１月から２月にかけて、いろいろなこ
がとありました。やや気分が落ち込んだことも事実です。そんな
ときの避難先(^^;は、ネットの友人たちとのおしゃべりです。友
人たちのＢＢＳめぐり、そして長らく馴染んで居座っているニフ
ティーフォーラムのF2NDHALF。いい友達がたくさんいます。

そしてもうひとつの避難先(^^;が読書。といってもそんなに難し
い本を読むわけではありません。良質のエンタティンメントが醸
し出してくれる癒しの時が、こういうときはいいですね(^^ゞ

例によって、宇江佐真理や北原亜以子の時代小説をのんびり数冊
読んで楽しみました。時代劇の舞台イメージをくっきり頭に描き
ながら、その中にじっくりひたる。実に良質の時間がそこには流
れていきます。ある意味、至福のときでもあります。

ところが何を思ったか、かなり毛色の違った本をいくつか読み始
めました。一種、内幕ものというか、ドキュメントタッチという
か､その手のエンタティンメントです。これが面白かったんです｡

そのひとつが弁護士作家である中嶋博行の法曹シリーズ３部作で
した。１巻目の｢検察捜査｣は第40回の江戸川乱歩賞受賞作品。そ
してこれに続いて｢違法弁護｣｢司法戦争｣があります。

３部作ともに、検察、弁護士、裁判所の抱える矛盾を克明に描き
出しながら、その中に良質のミステリーを盛り込んでいく手法で
す。さすが現役弁護士作家の面目躍如たるものがありました。

この小説の中で描き出された、法曹界が抱えるさまざまな問題は
多少の小説的な脚色はあるにせよ事実なのだと思います。検察や
裁判官の圧倒的な不足から来る彼らの激務ぶりは目を覆いたくな
るものがりました。そして逆に弁護士は、巷に溢れすぎて開店休
業状態に追い込まれそうになっている上に、アメリカからの弁護
士上陸という外圧まであるというわけです。

ふだんその内実を目にすることの少ない世界を舞台にしたこうし
た内幕もの的な小説は、その世界を垣間見せてくれるだけで、も
う十分なエンタティンメントになるのだといえるでしょう。

その意味で麻生幾の｢宣戦布告－加筆完全版｣は、戦争という有事
に国家と警察と自衛隊がどのように動くのかという一級のシミュ
レーションを行なっているという意味では、内幕ものの面白さと
力強さを遺憾なく見せつけてくれました。

作者は、もともとがジャーナリスト。これが最初の小説作品だと
いうことです。阪神淡路大震災時の首相官邸混迷やオウム真理教
事件、グリコ森永事件、ペルー日本大使公邸占拠事件などで辣腕
ぶりを発揮したその筆力が、北朝鮮からの侵略という有事の発生
に際する国家機構的な動きと問題を徹底的に描きます。

どちらの小説も、検察や警察の機構、官邸や各省庁の役職名や肩
書きをきわめて緻密に規定しながら人物を設定して描きあげてい
ます。特に｢宣戦布告｣ではそれが顕著であると同時に、自衛隊に
おける各種戦闘体制における略号等が実にきめ細かくリアルに描
きあげられています。このあたりがまぁ、内幕もののリアリズム
であり、硬質な面白さなのでしょうね。

しかし小説的には、ちとうっとうしい嫌いがないではありません
でした(^o^) なれてしまえばどうということもないんでしょうけ
どねぇ～(^^ゞでもまた、こういう作品を探そうと思います(^^;