マイクロマシン1

リリパットよりさらに微小な世界へ

｢ルミュエル・ガリバー著・世界の遠方民族を訪ねたいくつかの旅｣
これがかの有名なガリバー旅行記のタイトルである。ジョナサン・
スィフトがガリバー著の仮構を装ってこの本を出版したのは1726年
のこと。この物語からガリバー＝巨大という寓意が生まれ、ガリバ
ー企業などという表現が用いられるようになった。が、ガリバー自
身が巨大だったわけではない。彼の訪れた最初の国が｢小人国｣だっ
たために彼が相対的に巨大になっただけである。もっとも、その次
に訪れた国が｢巨人国｣ではあったけれども……。

ガリバーの訪れた小人国リリパットの住人は身長およそ15cm。我々
のおよそ11分の１。このリリパット国が我々の世界と同じような技
術的発展を遂げていたら、彼らのつくる機器はすべて11分の１のス
ケールである。そこでつくられる機器を我々の世界に持ち込んでき
たら、さぞや精巧なミニチュアマシンが手に入ったことだろう。

ところが我々が今から訪ねようとしているマイクロマシンの世界は
リリパット国のミニチュアマシンより100倍以上も小さなマシンの
世界である。そこには通常の世界では考えられない不思議がぎっし
りと詰まっている。そこはアリが驚嘆して眺めるような極微小の世
界である。そんな極微小世界の不思議ぶりを眺めてみよう。

[2]へ続く